メロディを弾く

カンテレで好きな曲のメロディを弾けるようになる!
これが第一の目標です。

メロディだけでもすらすら弾けたら、それだけで様になります。
実際にYouTubeやニコニコ動画を見ると、伴奏が華やかだが実はカンテレはメロディを弾いてるだけ、という演奏動画がけっこうあります。それでも十分に楽しめるものです。

クリアすべき3つの課題

他人の力を借りずに自分の力だけで、カンテレで好きな曲のメロディを弾けるようになるには、次の3つの課題を順にクリアする必要があります。

メロディを覚える
メロディを覚えてないと弾きようがありません。自分の好きな曲を鼻歌で歌えるようになるのが最初です。
弦を弾く順番を見つける
メロディを覚えたとして、それをカンテレで弾くにはどの弦を順番に弾いていけばよいか?それを見つけ出し、覚えるのが次です。
すらすら弾けるようになる
カンテレの弦を弾く順番が分かったとして、えっちらおっちらでは聞いてられません。すらすらとリズミカルに弾けるように、指の動きを工夫したり、間違わないように繰り返し練習するのが最後です。

それぞれの課題について、順に説明します。

楽譜は使いません

言い忘れてましたが。
一連の作業は楽譜を使いません。徹頭徹尾、自分の耳を頼りにやり遂げることを前提にしています……だって楽譜読めないでしょう?

それに楽譜って期待するほど役に立ちません。
例えば人気アーティストの最新曲なんて絶対に楽譜はありませんし、同様にYouTubeで偶然聞いた異国の不思議なメロディ……なんてのも楽譜の見つけようがありません。

そして驚くことに、巷の楽譜って平気で嘘を書いてます。
お金で売ってる楽譜でもざらに間違ってます。楽譜を見るなら参考程度、信用すると騙されます。メロディを自分の耳で聞いて覚えて弾けるようになるのが基本です。

メロディを覚える

そもそもメロディを覚えていないとカンテレで弾きようがありません。
メロディを覚えるのが最初です。何も聞かなくても空で鼻歌で1コーラス歌えるようになるのが最初の課題です。

ってもメロディの覚え方を説明する必要はないかと思います。
どんなカラオケ嫌いの人だって、今まで生きてきて口ずさんだ曲の一つや二つはあるでしょう。カラオケ好きの人なら、それこそいつもやってることです。ひたすら繰り返し聞いて覚える。それだけです。

便利アイテムもあります

そのような目的の、ボーカルトレーニング用の便利アイテムも、あるといえばあります。CDの曲を一カ所だけリピート再生したりとか、速いフレーズをゆっくり再生したりとか。これからがっつり曲を覚えたいと思っている人には重宝するかもしれません。
»CD-VT2ボイストレーナー

それからきっとスマフォ用にも、似たようなソフトウェアがあるはずです。スマフォに入れた音楽ファイルをリピート再生したり、ゆっくり再生したり、いろいろできるやつです。探してみるといいです。

高い声や低い声で歌ってみて

鼻歌で1コーラス歌えるようになったらここの課題はクリアですが。次の課題のウォーミングアップもしておきましょう。

  1. 覚えたメロディを歌ってみてください。
  2. 次は今より少し低い声で歌ってみてください。
  3. 次は逆に少し高い声で歌ってみてください。
  4. そんな感じに色んな高さの声で歌ってみてください。

次の課題がいちばん難しい。
相対音感のスキルをフルに発揮します。

弦を弾く順番を見つける

メロディを覚えたとして、次はそれをカンテレでどのように弾けばよいか?具体的には「出だしはこの弦から弾いて、次はこの弦を弾く。その次は…」とメロディの最初から最後まで、弦を弾く順番を見つける必要があります。それが次の課題です。

さて。カンテレを目の前に置いてみて、どうです、できそうですか?
カンテレの弦は11本、試行錯誤すればできないことはないでしょうが。できれば無駄な努力はしたくない。何でもいいからヒントがほしいところです。ヒントねえ……ありますよ。

メロディの最後の音は必ずドかラの音です。

準 備

話を進める前に準備をしておきましょう。
紙と鉛筆を用意してください。
これは分かったことを忘れないようにメモするためです。「”出だしはソソソミレードドー”」みたいに。

カンテレはDキーにチューニングしてください。
確実ではありませんが、統計的にDキーは弾ける曲が多いです。カンテレの音階やチューニングについては、こちらの記事をご覧ください。
»『カンテレの音階』

最後の音は必ずドかラ

では話を進めましょう。
メロディの最後の音は必ずドかラの音だ、という話でした。そうですね、それは真理です。(って小学校で習ったはずですよ。)メロディの最後の音――たいてい長く伸ばして終わる音の、雰囲気や余韻に注意してください。

最後の音が楽しい感じ
最後の音がぱあっと陽が差す感じ、楽観的な未来を予感させるような雰囲気の曲は、長調の曲です。長調の曲の最後は、必ずドの音で終わります。
最後の音が哀しい感じ
最後の音がどんよりと陽が陰る感じ、悲観的な未来を予感させるような雰囲気の曲は、短調の曲です。短調の曲の最後は、必ずラの音で終わります。

さて、あなたのメロディの最後の音はドですか?ラですか?
初心者でも案外に正解を選ぶものですよ。なに、間違ったら反対でやり直せばいい。

そしてそれはカンテレではどの弦かというと……分かりきったことです。「DキーはDの弦から順に弾いていくとドレミファソラシド」になっているのですから、ドの音はDの弦を弾けばいい。ラの音はBの弦を弾けばいい。はい、これで一つ見つかりました。

最後の音を頼りに他の音を見つける

後はクロスワードやナンバーズを解くように、分かるところから片っ端に見つけていきます。

とりあえず最後の音が分かったのですから、終わりの方から逆向きに見つけていくのはどうでしょうか。「なぜかサビの部分だけすんなり分かってしまった」ってこともあるでしょう。

運良く終わりの音と出だしの音が同じなので一発で分かった、ということもあるでしょう。メロディの終わりの音が決まっているように、出だしの音も割と決まってます。

長調の曲の出だし
長調の曲の出だしはたいていドの音。でなければソの音。希にミの音。
短調の曲の出だし
短調の曲の出だしはていていラの音。でなければミの音。ドから始まることも。

最初は真っ白で途方に暮れるかもしれませんが、後半になるにつれ、加速度的に答えが見つかります。

高さが合わないときは他のキーで試す

運が悪いとメロディの音が高すぎたり低すぎたりで弾ける弦がない、とうことがあります。こうなると仕方ないので、メロディが11本の弦の間に収まるように、他のキーにチューニングします。高い音が足りないならCキー、低い音が足りないならFキーなどいかがでしょうか。

そうそう、チューニングしてるうちにいろいろ忘れないように、メモしておくといいです。

※ 以上は原則です。最近のハイカラな曲だと、終わりの音や出だしの音が違うこともあります。民謡や童謡はまず原則通りですから、慣れないうちはそのへんから練習するといいでしょう。

※ 曲の音域が広すぎてどうしても11本の弦の間に収まらないとか、途中で変な半音が出てくるとかで、そもそもカンテレで弾けない曲もあります。それはもう諦めてください。一つの楽器でどんな曲でも弾ける、というのは西欧のコンサート楽器の常識です。民族楽器だと、曲によって弾けたり弾けなかったりするのは、ざらです。

すらすら弾けるようになる

カンテレの弦を弾く順番は覚えられましたか。
えっちらおっちら弾けていますか。最後の課題ではこれを、自分で弾いてて楽しい程度にはすらすら演奏できるようになることを目指します。

原則として指一本で弾く

まずは指一本で弾くことにしましょう。
YouTube動画で見るような一流ハーピストの指の動きなんて真似できません。身の丈に合わせ、右の人差指だけで弾くようにがんばります。

といっても、実際にはフレーズが速すぎて弾けないとか、音がぽんと遠くに飛ぶので間違って弾いてしまうとか、そういう問題があって、指一本でカンテレを弾くのには限界があります。

だから原則として指一本で弾くように努力する。
それでも上手く弾けない箇所は、他の指も使うように工夫する。
というやり方が現実的でしょう。

予め左指をスタンバイ

ちょっと以下の操作をやってみてください。

  1. カンテレを構えて、写真の○印の弦の上に左指を置く。
  2. 親指で弦を押さえて外さないようして、残りの指4本を少しだけ弦から浮かせる
  3. 指4本で○印の弦をそれぞれ弾いてみる。
  4. 指4本を△印の弦に平行移動して、それぞれ弾いてみる。
  5. 指4本を×印の弦に平行移動して、それぞれ弾いてみる。
  6. 指4本を○△×印の弦にいろいろ平行移動して弾いてみる。
  7. 親指で押さえた弦を弾いて、3秒数えてまた押さえる

左指は最初からカンテレの11本の弦をカバーするようにスタンバイしています。この状態で、原則として右の人差指一本で弾くように努力して、速すぎたり遠すぎたりで上手く弾けない箇所は、近くの左指で弾きます。

メロディの流れに応じて、左指4本の位置を○△×のそれぞれに平行移動すると演奏しやすいでしょう。(平行移動でいいですよ。律儀に○△×の印の箇所を押さえなくていいです。)

左の親指でずっと弦を押さえているのは、指4本の位置を見失わないように、基準として押さえています。左の親指も弾くべきときはもちろん弾きますし、右手の邪魔になるようなら、上に浮かせて弦を空けます。

原則として右の人差指一本で弾くように努力して、上手く弾けない箇所は近くの左指で弾くようにして……いやそれより右の他の指で弾いた方が簡単じゃね?と思ったら、ぜひ右の他の指で弾いてください。

このような奏法=ルールは足がかりです。
便利に使えるだけ使って、合わない箇所や他に上手い方法を思いついた箇所は、自信を持ってよりよい方法を採択してください。

動画に見る演奏例

『サッキヤルヴェン・ポルッカ』をこの奏法で演奏した例です。

左指は最初からずっと待ち構えていて、右の人差指が動く隙間を埋めるように弦を弾いています。実際に自分で弾いてみると、この奏法のいくつかの利点に気づくでしょう。

  • 左指が目印になるため、右指で弦を弾くとき間違えにくい。
  • 邪魔な音を左指で押さえて消音できる。
  • コードを演奏できる。(メロディ最後のじゃらーん)

このカンテレ教室では、最終的にカンテレをコード奏法することを目標にしています。その意味で、この左手の動きはよい練習になります。

『メロディを弾く』の話は以上で終わりです。