メンテナンス

カンテレの金属部品は錆びます。
チューニングペグと弦はそれほどでもないのですが、スピットが錆びます。蒸し暑い夏場はハードケースに収めていても真っ赤になります。

ネットで調べた感触として、涼しく乾燥したフィンランドでは、カンテレはそれほど錆びないようです。「鉄で出来ているんだから少しくらい錆びるでしょう」と、のどかなものです。もともとヨーロッパの人にとって、アジアの錆害は想像を超えているところがあります。だからこの件は、私たち自身でなんとかするしかありません。

スピットは太い鉄の棒で出来ています。
だからこれの表面が錆びたからといって、すぐにカンテレがだめになるとは考えられません。しかし見た目は最悪だし、このまま錆が進むと…と想像すると気持ちのいいものではありません。一度錆を落として、表面保護剤でコーティングしておくといいでしょう。

用意するもの

錆落とし剤
ここで使用したのはギター用の『FERNANDES SCRATCH MENDER 946』
表面保護剤
ここで使用したのはギター用の『FERNANDES SURFACE PROTECTOR 956』
水糸
ここでは7号を使ったけど、もう少し細い方がよかったかも。
ハサミ、爪楊枝、ティッシュペーパー
ハサミは水糸を切るのに使う。爪楊枝は細かい作業用

スピットの磨き方

  1. 水糸を1mくらい切る
  2. 切った水糸をスピットにくるっと巻きつける
  3. 爪楊枝の先で錆落とし剤をすくいスピットにこすりつける
  4. 水糸を両手で持ってスピットをごしごし磨く
  5. 水糸の錆落とし剤の付いていない部分で更に磨く
  6. 水糸を新しいのに取りかえる
  7. 爪楊枝の先で表面保護剤をすくいスピットにこすりつける
  8. 水糸でスピットをごしごし磨く
  9. 水糸の表面保護剤の付いていない部分で更に磨く

弦の磨き方

せっかくの機会ですから、いっしょに弦も磨いておくといいでしょう。

  1. ティッシュペーパーを小さくちぎって錆落とし剤をつける
  2. 錆落とし剤をつけたティッシュで弦をごしごし磨く
  3. 新しいティッシュをちぎって、更に弦をごしごし磨く
  4. ティッシュペーパーを小さくちぎって表面保護剤をつける
  5. 表面保護剤をつけたティッシュで弦をごしごし磨く
  6. 新しいティッシュをちぎって、更に弦をごしごし磨く

弦の交換の仕方

カンテレの弦を切ってしまったら仕方ない。
自力で交換しましょう。なに、ギタリストはみんなやってることです。

用意するもの

交換用の弦
切れた弦の代わりに張る新しい弦が必要です。カンテレを買ったお店に売ってると思います。どの弦にどの太さの弦を使うかは、本体に付属のスペック表に書いてあります。分からないときはカンテレを買ったお店に確認すればよいでしょう。
ピアノ線クリッパー
カンテレの弦は硬いピアノ線です。ニッパーでは切れません。ホームセンターやAmazonでクリッパーを入手しましょう。っても細いピアノ線なので、いちばん安い小さな物で使えると思います。
ラジオペンチ
細かい作業をするときに使います。安物でいいです。
保護用ゴーグル
作業中にピアノ線が撥ねて目を切る事故を防ぐために着用します。万が一ですよ。眼鏡をかけているならOK。なければ水泳用のゴーグルでもサバイバルゲーム用のゴーグルでも何でも構いません。

注意

  • ピアノ線の先端は鋭いです。指や目を傷つけないように気をつけてください。万が一のため、保護用ゴーグルを着用してください。
  • 明るい片付いた場所で作業してください。
  • 作業に取りかかる前に、カンテレを観察しながら何度も頭の中で練習してみてください。それから実際に手を動かしてください。

作業手順

1) ラジオペンチを使って切れた弦を取り除きます。チューニングペグを反時計回りに3回転ほど回します。(あとでピンを3回転ほど締め直すので。)

2) 水平なスピットに新しい弦を掛けます。スピットに新しい弦を掛けて、弦の片端が輪っかになってるので、その輪っかに弦のもう片端を通します。通した片端を引っ張って、スピットを締め付けます。(こうすると弦の留め方が他の切れてない弦と様子が違ってしまいますが……仕方ないです。あなたはカンテレ職人ではありませんから、同じようにはいきません。)

3) スピットに留めた弦をチューニングペグの方へ引っ張ります。弦をチューニングペグの小さな穴に通して、ピンと張るまで引っ張って、チューニングペグの穴からはみ出た部分を3cm残してクリッパーで切り捨てます。

4) 弦を引っ張り戻して、弦の先端がチューニングペグの穴にぎりぎり隠れるくらいで、親指でぎゅっと弦をペグに巻き付けるように押しつぶして弦を直角に曲げます。これで弦をペグに巻き付けることができます。(弦の先端がペグの穴からはみ出ていても使えますが……触ると怪我をしますよ。)

5) 弦が緩まないように引っ張ったまま、チューニングペグを時計回りに回して、弦を巻いていきます。弦を巻くとき、すべての弦が横から見たときに同じ平面に揃うようにしてください。あんまり弦が上下に不揃いだと演奏しにくいです。弦の高さがあまりに不揃いになったときは、弦を緩めて高さを揃えて、巻き直します。 また、弦がびりびり鳴るときがあります。このときもペグをわずかに回すと治ります。

YouTube動画が参考になります

カンテレを製作するYouTube動画が参考になります。
動画はシリーズになっているのですが、これはそのカンテレに弦を張る方法を説明した部分。英語ですけど、上の説明を読めば何をしているか分かるでしょう。

チューニングスイッチの調整(ロビッカ社)

いくつかのモデルに搭載されているチューニングスイッチは、カンテレのキーを瞬時に切り替えることができるのでとても便利なのですが。なにが原因なのか、使っているうちに狂ってきて、ぴたっとピッチが半音上下しなくなることがあります。狂ったチューニングスイッチは自分で調整できます。

用意するもの

  • 調律ハンドル
  • 電子チューナ
  • 3/16インチ六角レンチ

特別に用意する道具は六角レンチだけです。
3/16インチってどれぐらいの太さのレンチだっけ?とよく分からない場合は、細いのから太いのまで束になってるセットを購入すればいいでしょう。それで千円ちょいです。

作業手順

1)チューニングスイッチを分解する
調律ハンドルでチューニングペグを回して弦を緩め、チューニングスイッチのレバーを引き抜きます。レバーは台座に差し込んであるだけです。簡単にばらばらになります。

2)台座を回して弦とレバーの距離を調節する

台座を真上から覗き込むと、レバーを差し込む穴が見えます。

よく観察すると、レバーを差し込む穴は、台座の中心から外れていることが分かります。つまり台座を回すことによって、レバーを弦に近づけたり遠ざけたりすることができるわけです。

六角レンチで台座を慎重に回して、レバーと弦の距離を調節します。

レバーを弦に近づける
レバーを捻ったときのピッチの変化が大きくなります。多くの場合、チューニングスイッチはピッチの変化が小さくなる方向に外れてくるので、レバーを弦に近づけるように調整することの方が多いでしょう。
レバーを弦から遠ざける
レバーを捻ったときのピッチの変化が小さくなります。

3)試行錯誤して調整する
再びチューニングスイッチを組み立てて、弦を張り、正しくチューニングして、チューニングスイッチを捻ってみて、ぴたっとピッチが半音上下するか確認します。

おそらく一発で治ることはないでしょう。
ぴたっとピッチが半音上下するように、チューニングスイッチを分解して台座を回して、組み立てて確認して…というのを繰り返します。

!!!弦押さえの溝に弦を掛けてください!!!
弦押さえには水平に小さな溝が掘ってあります。ここに弦を掛けてください。でないと使っているうち、ずるずる滑って弦が外れてしまいます。

『メンテナンス/弦交換』の話は以上で終わりです。